CASE STUDY
冬タイヤの需要予測及び
在庫配置最適化プロジェクト
AIを利用して冬タイヤの需要予測と在庫配置の最適化を実施し、オペレーションコストと欠品による機会損失の同時削減を実現
Project Year: 2021~
Client: 株式会社ブリヂストン様
課題
スタッドレスタイヤ等の冬タイヤは雪道や凍結路面での走行に適したタイヤであり、その年の販売量予測は容易ではありません。冬タイヤの販売量は、主に以下の 3 つの要素に影響されます。
気象状況 冬タイヤは夏用のタイヤと比較して、気温や降雪による影響が顕著です。降雪地区では降雪のタイミングにより需要時期が変動する一方で、非降雪地区で予想外の降雪があると、需要が一気に拡大します。毎年 「平年並み」の気象条件をベースに販売量を予測していますが、誤差が発生することも頻繁に起こります。
他社の欠品状況 販売点では他社のタイヤも販売しており、あるメーカーのタイヤが欠品した場合は別のメーカーに流れることが多く、他社の状況も販売量に影響を与えます。
新車販売の状況 車種に応じてタイヤのサイズが異なるため、新車の販売状況によって需要のあるタイヤのサイズは変動します。
このように、冬タイヤの販売量には複数の要因が関与しています。従来は販売担当者が経験に基づいて予測を行っていましたが、予測を外してしまう度に、欠品や過剰在庫が発生。その結果、追加の対応業務などのオペレーション上での追加コストや売り逃しによる損失が発生していました。
課題解決に向けたアプローチ
業務オペレーションコストの削減と、欠品が発生することによる機会損失、この二つを同時に削減することを目指して、以下の 2 つの AI モデルを作成しました。
- タイヤの販売量を予測する需要予測モデル
- 需要予測の結果に応じて、適切な倉庫に在庫を配置する在庫配置最適化モデル
需要予測モデル
- タイヤの販売データに加えて、気象データ、自動車の販売データなどを特徴量として追加し、気象の変化に適応可能な機械学習による需要予測モデルを作成しました
- 一部の地域では降雪データが少なく機械学習での対応には限界があったため、統計処理による予測も行い、統計と機械学習のハイブリッドモデルを作成しました
在庫配置最適化モデル
- 需要予測の結果を利用して、在庫配置の最適化を実施しました
- どの地域に、どのタイミングで、どれだけの量を配置すべきかを算出し、その配置を実現するための出荷計画を割り出す最適化モデルを作成しました
活用データ
- 受注、出荷、在庫、欠品等のオペレーションのデータ
- 降雪量、新車販売等の外部データ
効果
- 工場から必要なエリアに集中して商品を送り込み、ピークアウトに応じて北から南へ南下していくという柔軟な在庫配置が実現しました
- 需要予測モデルを使った実運用を実施した結果、全体の 90%を占める主要製品における予測の精度が 80%を超えるという実績を記録しました
- オペレーションコストの削減と、在庫欠品による機会損失を防ぐ効果を生み出すことに成功しました
- 現在は一部地域のみで適用している在庫配置モデルの全国展開に向け、モデルの改善やオペレーションの仕組みを構築中です
案件担当者
北田 啓一郎
瀬川 晋作