CASE STUDY

三菱商事人事部が挑む、伴走型支援で実現するデータ・AI活用による人事戦略の進化

Client: 三菱商事株式会社人事部様


左からエムシーデジタル担当者の横山、三菱商事の塚田氏、川辺氏

企業競争の激化・価値観の多様化に伴い、人事部門には、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出し企業価値を最大化する『人的資本経営』という新たな役割が求められています。三菱商事株式会社の人事部では2020年からエムシーデジタルと協業し、様々な形でヒトと組織のデータを可視化・分析し、人事機能の向上に活用してきました。

今回は、三菱商事株式会社人事部タレントマネジメントチームリーダーの塚田氏と人材開発チーム川辺氏(以下敬称略)に、エムシーデジタル担当者の横山を交え、データ・AI活用による人事業務の変革、その成果と今後の展望について聞きました。

公平性・透明性を担保した人材・組織データの可視化と分析へ

―― まずは、お二人の担当業務について教えてください。

塚田:私はタレントマネジメントチームリーダーを担っており、このチームは大きく分けると二つの領域があります。一つは幹部向け施策です。部長クラス以上の職務評価や人材の可視化を行っています。もう一つは、広く全社員向けの施策。考課の面談とは切り離して、キャリア開発・能力開発を目的に上司・部下が対話する「成長対話」や公募型の配置施策などを担当しています。

川辺:私は人材開発チームに所属しており、主に二つの領域を担当しています。一つは社員エンゲージメントに関する業務で、社員意識調査などが主管です。もう一つは業務プロセス変革で、社員がイキイキと働けるような風土・仕組みづくりを行っています。

――エムシーデジタルとどのような背景で協業してきたか教えてください。

塚田: 最初は「ヒトと職務の可視化」から始まりました。三菱商事は、消費者に近いビジネスからエネルギー関連まで、幅広い事業領域を持つ企業です。多様な事業領域を踏まえて、適時・適切に人事制度の設計・実践が必要になります。各事業や職務、人に関する様々な情報・データを効果的に活用するためには、人事部だけでは難しく、エムシーデジタルの皆様とは、御社設立直後の2020年から継続してご依頼し、データの可視化・分析を伴走していただいております。

川辺:私は2023年度から社内で社員意識調査の担当になった際、人事部内でエムシーデジタルとの取り組みを紹介してもらい、担当領域ですぐに活用できると感じて分析・可視化をお願いしました。

包括的な伴走支援で、人事部のデータ活用を大きく加速

―― エムシーデジタルとの協業体制について詳しく教えてください。

塚田:当初はデータが人事部内の各チーム内だけで分析をしていて、横断的なデータアプローチが限られていました。また、仮に外部の力も借りてデータ分析をした場合も、案件が単発で終わってしまい、継続的なデータ活用に繋がっていないケースもありました。そこで、エムシーデジタルとは短期間ではなく、継続的な包括契約を締結し、人事データの利活用という広いテーマで支援頂く体制としました。特定の案件や領域に限定せず、様々なテーマで分析・可視化を行い、より深掘りが必要なテーマは個別プロジェクト化する形式にしています。こうした体制でのご支援を継続して頂いたことで、人事部内のデータに利活用に対する知見や感度が高まってきたと感じています。

横山:包括的な契約の中で、各チームの皆様の実現したい人材・組織のビジョンや課題感をお伺いした上で、そのニーズを満たすための分析・可視化手法、必要なデータなどをフラットに議論し、分析結果を踏まえて方向性を変えていくアジャイル型(※1)の体制を実現しています。

※1:アジャイル型:順序立てた進行ではなく、反復的かつ漸進的なプロジェクト進行を特徴としたもの

―― この契約を踏まえて感じられる効果などはありますか?

塚田:当初の想定以上にチーム横断的な分析が実現できています。また、「生成AIを可視化に活用できるのではないか?」「このデータはあのデータと繋ぐと新しい発見があるのではないか?」というような試みも、アジャイルに進められるようになりました。いまでは、分析・可視化したいテーマが目白押しとなっていて、それだけ部内の人事領域におけるデータ利活用の文化が根付き、醸成されていると考えています。

横山:人事部の皆様と一体となり大きいビジョンと興味・関心をもって、進められるため、私個人としては三菱商事人事部の皆様との案件がイキイキ・ワクワク働けるプロジェクトの一つです。新しい技術や手法もお客様に役立ちそうなものがあれば「こういうのやってみようよ」と言うと積極的に試させてくれる環境があり、単純な発注者-受注者の関係を超えた対等なパートナーとして議論させてもらえている感覚があります。

塚田 : パートナーという感覚は私たちも同じ思いです。担当の横山さん・白鞘さんが、一緒に好奇心を高く持ってプロジェクトを進行してくれていることを感じています。お二人とも我々のやりたいことを深く理解し、そこに対して高い専門性で分析結果を出し、伴走してくれています。例えるなら、「人事部の中に分析やAIに詳しい仲間・パートナーがいる」ような感覚です。

AI導入で生まれた効果―業務効率化、分析精度向上、そして組織変革へ

――この契約の中でエムシーデジタルと取り組まれた具体的な課題を一つ教えてください。

川辺:人材開発チームでは、社員意識調査の自由記述コメントの分析で課題を感じていました。回答の量は3,000件を超え、内容の分析や傾向把握が困難で、従来は人手による集計に多くの時間と労力を費やしていました。毎年社員意識調査の時期には分析による業務量が多く発生し、「課題に対する打ち手」を考える、本質的な業務に割く時間を十分に確保するのが例年大変でした。

―― AI導入によって、どのような成果に繋がりましたか?

川辺:膨大なコメントも初期的にAIが自動で分類してくれるため、オペレーショナルな分析工数は90%以上削減できました。自由記述欄への回答をAIで自分の見たい軸で分類したことで、特定の質問に対するスコアが低かった時に該当の分類がなされたコメント群を見に行くというプロセスも可能になり、これによって具体的な課題・原因を導き出すことが、今までよりも格段に効率的に実施できるようになりました。削減できた時間と具体的な課題を導き出す新たなプロセスにより、従来よりも質の高い打ち手の考案が可能となりました。

塚田:データに基づいた議論がこれまで以上に可能となったことも大きな変化です。コメントデータの全容を把握することは難しく、個々人の経験による感覚的な議論に終始しているケースもあったのではないかと思います。AIによる分析結果をわかりやすく可視化してもらうことで、異なる経験を持つ人の間でも同じファクトに基づいた客観的な議論ができるようになりました。

――AIを使う中で得られた気づきなどはありますか?

川辺:上記の直接的な効果だけでなく、「こんな視点で質問をしてみるのも必要では?」といった、より質の高いデータ取得をするためのサーベイ内容の考案にも繋がっていると感じます。また、社員意識調査だけでなく、所管する他の業務データでも同様の効果が得られており、期待以上の成果を実感しています。

未来へ向けた展望―人事データの可能性を最大限に引き出す

―― 将来的なデータ・AIのさらなる活用に向け、今後取り組んでいきたいことを教えてください。

塚田:三菱商事人事部として今後は、個々のデータ分析の推進はもちろんのこと、分析に必要なデータの取得・蓄積方法もさらに進化させ、データの取り方から可視化も含めてどうまとめていくのが適切か、より中長期的なデータ活用に向けた検討もエムシーデジタルと一緒に取り組みたいと思っています。

川辺:今あるデータだけではできないものの、やりたいことも多くあります。やりたいことを赤裸々に相談させてもらいながら、それならどのようなデータ、どのような分析が必要か、エムシーデジタルからはプロフェッショナルとしてアドバイスをどんどんいただきたいと思っています。

データ・AI活用で人事の提供価値を高めていく時代に

―― 最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

塚田:人事部門におけるデータ・AI活用ニーズは増えてきていると思います。従来はデータとして取り扱えなかったテキストや音声なども、生成AIの登場により、データ化・定量化が可能な世の中になってきました。目的設定は重要ですが、データを可視化しその上で議論・意思決定していくことで、「人が人を見る」という一種の属人性を持っている人事業務自体の質を向上させることに繋がっていくと思います。

川辺:人事部のオペレーショナルな業務はAIなどを活用して効率化すれば、人間がやる必要がなくなるものもあると思っています。そのうえで人事に残る本当の役割は「従業員のパフォーマンスを高め、会社の価値を向上させる」ことだと考えています。そのためにデータを活用して的確に課題を見つけ、改善していくことが人事の価値を高める一つの大切な手段だと思いますし、エムシーデジタルはそこを実現してくれる伴走者としておすすめできます。

横山:ありがとうございます。エムシーデジタルは、これからも三菱商事様をはじめ、多くの企業人事部様のデータ・AI活用とその先の意思決定・経営戦略の実現を伴走し支援してまいります。



―貴重なお話、ありがとうございました。

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案件担当者

横山 遼

白鞘 祐斗